Complete text -- "『百万本のバラ』"

30 July

『百万本のバラ』

少し前の話になりますが、6月1日はうしお画廊の創立記念日ということで、6周年のお祝いにお伺いしました。オーナーの牛尾さんはお酒全般がお好きですが、ウイスキーはバーボンがお好きだとおっしゃっていたので、私からはコーヴァルのシングルバレル・バーボンをプレゼントしました。

続々と駆けつける関係者から送られるプレゼントには必ずと言って良いほどお酒が入っており、ビールにワインに日本酒と、様々な種類のアルコールが集まって壮観だったのですが、その中にジョージアのワインがありました。

ジョージアと言えば「ニコ・ピロスマニ」、ピロスマニと言えば『百万本のバラ』ということで話も弾みました。そこで、今日は『百万本のバラ』の話をしたいと思います。

日本では加藤登紀子さんの歌で知られており、おそらくほとんどの方が『百万本のバラ(Миллион роз)』といえばその曲を思い浮かべるのではないでしょうか。しかしこの曲、元は1982年、私が15歳の頃の旧ソ連での大ヒット曲です。

ジョージアの画家ニコ・ピロスマニがフランスの女優マルガリータに贈ったという「百万本のバラ」のエピソードのこの曲ですが、ラトビア出身の作曲家、ライモンド・パウルスが作った別の曲に、ロシアの詩人、アンドレイ・ヴォズネセンスキーが詩をつけ、ロシアのポップスの女王、アーラ・プガチョワ(Алла Пугачёва)が歌って世界的に有名になりました。当時中学3年生だった私は、この曲がヒットチャートを駆け上っていくのをモスクワ放送(外国向けラジオ放送)で聴いていました。

ちなみに、この当時のモスクワ放送日本語課の人気アナウンサー・西野肇さんが、この曲の入ったアルバムの日本盤発売の立役者だったそうです。興味のある方はこの本『冒険のモスクワ放送: ソ連“鉄のカーテン”内側の青春秘話』を読んでください。

この『百万本のバラ』ですが、様々な民族の芸術家が関わった作品であり、多くの民族と国家の集合体だったソ連ならではの作品だったのではないか、とも言われています。やはり様々な価値観や文化が交わることで、良いものが生まれるのではないかと思います。

さて、余談ですが、最近の研究者の間ではこのエピソードはヴォズネセンスキーの創作ではないかと言われているそうです。

確かに、貧しい画家・ピロスマニが小さな家と絵を売って、百万本のバラを買えるのか、そしてどうやって女優の宿泊先の窓の下に運ぶのか、そもそも仕入れ先は一度に百万本も集められるのかなど、考えてみると、とても難しそうではあるのですが…。でも千本くらいなら可能なのではないかと勝手に想像しております。

さらに、それどころか、バラを贈られたとされる女優・マルガリータは実在しない、という説さえあるそうです。

これについては、ピロスマニの代表作である肖像画『女優マルガリータ』もあるわけですし、私はさすがにその説は信じたくないと思っております。

余談ですが、アーラ・プガチョワの音楽は、中高生の頃、輸入盤のLPレコードを買い集めたものと、2002年に訪露した際に購入したCDを今でも大切に持っています。『百万本のバラ』はパウルス作曲ですが、彼女は元々シンガーソングライターで、自作の曲も沢山あり、私は『全ての力を費やしても(Все силы даже прилагая)』が好きです。
00:23:43 | tshibata | |
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