Complete text -- "絵を勉強したい人の指導者選び"
17 August
絵を勉強したい人の指導者選び
子どもの頃、幼稚園や学校で絵を描いて、楽しかったという思い出を持つ人は多いと思います。しかし、成長するにつれ、絵を描くことがずっと好きでいられた人よりも、いつしか苦手になってしまった人の方が多いのも事実でしょう。大人になっても絵を描きたいと思う人は、1)子ども時代からずっと絵を描くことが好きでいられた、統計的に僅か1割未満の人か、2)描くことは苦手になってしまったけれど、美術そのものに対する興味を持ち続けて、いつか描けるようになりたいと思っている人のどちらかだと思われます。
そして、描くことがずっと好きでいられた1)のタイプの人は、小学校高学年くらいに、他の人より上手に絵を描くことが出来る方法を見つけた人が多いと思われます。こういう人の中には、美大など、美術の専門教育機関に進学する人も含まれます。それ以外でも、特に専門家に習わなくても創作活動を楽しめる人が多いのです。このタイプの人たちにとっては、指導者がどのようなタイプであろうと、あまり関係がないかもしれません。
一方、大人になって、絵画教室などに通ってくる人の多くは、2)のタイプが圧倒的に多くなります。勿論こういう人たちは、自分的には「うまく描けない」と思っているのですが、実際には普通以上に描ける場合の方が多いです。
重要なのは、そのような人たちは、現状に満足していないという点です。世間一般の平均より絵が上手かどうかなんてどうでも良くて、「もっと描けるようになりたい」から習いに来るのだということです。
我々指導者は、このことを忘れてはならないと思います。
そしてこのタイプの方にとっては、指導者は重要になります。
しかし、残念なことに、世の中の大半の絵画教室やカルチャースクールの指導者はこう考えています。「(どうせ専門家になるわけではないんだから)好きなように、楽しんで描けばよいのです」と。
こういう姿勢で受講生に接する指導者に習っても、決して上達しないことは言うまでもないでしょう(このような指導者を判断する方法は別に書こうと思います)。
こういう指導者たちには「あなたのような大人が、今更頑張って絵を勉強したところで(自分のような)画家になれるわけはないんだから、無駄ですよ」とか「絵はそもそも指導されてうまくなるものではなく(自分のような)特別な才能を持った人じゃなければうまくならない」という傲慢な考えがあるのです。
このような考え、子どもの頃から始めなければ無理とか、そもそも才能がない人には無理、という考えは、現在科学的には否定されているのですが、残念なことに美術界ではこの考えは主流派なのです。
つまり、絵の指導者の多くは、素人の大人に絵を教えてもうまくならないと考えています。しかしそういう人を相手に商売をしている以上、教室をやめられるのは困るので、とにかく褒めておき、受講生に才能があると信じさせ、「その才能は多くの人にはわからないけど、指導者である私だけは理解しており、それを伸ばすことができるのは自分だけですよ」とアピールするのです。
これは一種の詐欺であると思います。
この詐欺まがいのやり方に信憑性を持たせるために、指導者が審査員を務めているコンクールや公募団体展などに出品させ、自分の権力で入選させるような方法も行われています。
もちろん私は、受講生の励みになるのであれば、展覧会に出品すること自体、悪いことだとは思いません。問題なのは、純粋に絵を勉強したい受講生の気持ちを利用して、指導出来ていない事実を、入選とか受賞で揉み消してしまうことです。
技法や材料用具の使い方をきちんと指導する指導者はいます。しかし大事なのはそれ以前のことなのです。ものの見方、捉え方。描くときの進め方、構図や形、明暗などをどのようにみて、どのように捉えるか。それを指導されなければ意味がありません。
絵をどうしても勉強したい皆さんは、指導者や教室を選ぶ時、このようなことを判断する基準にされるとよいと思います。よい指導者は、数は少ないですが、必ずいるはずですから、焦らず探してみてください。
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