Archive for December 2007

29 December

フェルメール展

フェルメール 「牛乳を注ぐ女」

少し前の話ですが、今月の上旬、国立新美術館に
『フェルメール 「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展』
を観に行きました。

閉館直前、六本木駅から走ってギリギリでした。

時間が経つと段々忘れそうなので、思ったことを書き留めておこうと
思います。

最初に書いておきますが、私はフェルメールを高く評価していますが、
個人的にそれほど好みの画家ではありません。

人物の描写などはあまり良いと思っていません。
しかし、フェルメールの見事な画面構成は素晴らしいです!

「牛乳を注ぐ女」のようなテーマの作品を「風俗画」といいますが、
フェルメール以外の代表的な風俗画家を挙げろ、と言われたら、
私はブリューゲルくらいしか思いつきません。

フェルメールはその作品数から考えると、後世に与えた影響は非常に
大きいと言えると思います。

さて、この展覧会でのフェルメール作品は、表題の一点のみ。
しかし、同時代の他の作家の作品と比較して、秀逸でした。
この一点だけ観る目的でも、1500円出した価値は十分ありました。

日本に居ながらにして観ることの出来る貴重な機会、逃す訳にはいきません。
それにしても、アムステルダム国立美術館は、よく貸してくれたなぁ、
と思います。

私は、この作品を直に観るのは初めてです。
画集や写真などで観る印象とは、やはり違いました。

第一印象は、思ったより小さいということ。
と、いうことは、もっと大きな作品、という印象があったということです。

写真では、構図や構成を観ることは出来ますが、色やマチエール(絵肌)は
実物を観ないとわかりません。

一番前に出ても、作品からはかなり距離があったので、ディティール(細部)までは
わかりませんでしたが、かなり厚めのマチエールでした。

他の画家の風俗画と比較し、圧倒的に発色がよいのは、丁寧に重ねた
絵の具の厚みに理由があると思いました。

チューブ入り・機械練りの絵の具が無い時代で、この厚みを出すには、
かなりの回数、丁寧に重ねたのでしょう。

色に関していうと、画集などでも女性の上着の黄色、前掛けの青は確認
出来ますが、テーブルクロスの淡い緑、前掛けの下に見えるスカートの赤は
それほどはっきりと効いているようには観えなかったのです
(勿論、黄色も青も、実物の方が美しかったです。この青はラピスラズリですね)。

しかし、実物はそのふたつ(淡い緑と赤)の色が非常に美しく、効いている事が
確認できました。

テーブルの形を台形にした理由のひとつには、赤いスカートを
見せることにもあったのかも知れません。

作品右上半分の壁面部分が、大きく間をとっている訳ですが、
ともすれば構図が悪くなるかも知れない、この構成の理由は何でしょう?

ひとつには、左から差し込む光。人物右側の暗部との対比、
回り込みを強調する役割があるのではないかと思います。

もうひとつは、通常の構図だと、作品左下半分の、要素が密集した部分が
うるさく感じるし、暗部が多いため、重たく感じてしまうからではないかと
思いました。

これらは、作品の大きさによっては観え方が変わるはずです。
実物を観て、初めて納得できる内容だと思いました。

今回、残念だったのは、やはり、柵の一番前で観ても距離が遠かったこと。

フェルメールに詳しい友人から聞かされていた、カメラ・オブスキュラ
(ピンホールカメラのような光学装置で、15世紀以降の画家が素描のためによく使用したもの)
を使用した事によってみえたと思われる、光の粒の表現が、パンの表面に
あるのですが、それもはっきりとは確認できませんでした。

いつの日か、アムステルダムに出掛けて、間近で観てみたいと思います。
19:32:12 | tshibata | |